
冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)
辻村深月
講談社 / 2007-08-10
この本について
クラスの空気とか、人との距離感とか、昔のことなのにいまだに胸の奥がざわつく場面ってありますよね。あの時うまく言えなかったこと、自分は加害者でも被害者でもなく「ただ見ていた側」だったことの気まずさ。人を気にしすぎる自分の弱さも、強がる自分の卑屈さも、どちらも後になってからじわっと効いてくるものだと思います。 『冷たい校舎の時は止まる(上)』は、その“後になって押し寄せる痛さ”を淡々と突いてきます。いじめをいじめとして認識していなかった軽さや、同情のズレが相手をさらに傷つけてしまうこと。誰かの才能に焦って自分を見失う瞬間や、優しさに見せかけた逃避としての無責任さ。どれも「自分にも心当たりあるな…」と喉の奥が熱くなる描き方で、妙に逃げ場がありません。読んでいるうちに、あの頃の自分の行動や、見ないふりをした感情がじわじわ輪郭を持ちはじめます。 一番効くのは、登場人物たちがみんな“不完全なまま生きている”ことです。誰も正しくないし、誰も完全な被害者でも加害者でもなく、そのグレーの中でどうにか呼吸している。だからこそ、自分の過去にあるモヤモヤを突然責めるでもなく、ただ静かに照らしてくれる感覚があります。 昔の記憶がふと蘇って苦くなる人、自分の曖昧な立ち位置にずっと引っかかりがある人には、特に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの48%が集中しています。
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