
妄想
森 鴎外
Gakuju Shoin, Publishers Lt / 2003-07
この本について
生きているだけで、ずっと何かに追い立てられている気がして、「この役割をこなしている自分の奥に、もう一段なにかあるんじゃないか」と落ち着かないまま日が暮れる。そんな感覚って、誰に言うでもなく胸の奥で沈んでいくものですよね。仕事でも勉強でも、人から見れば順調に動いているのに、当の本人はどこかで自分を置き去りにしている感じがする。 森鴎外の『妄想』は、その言葉にならない“置き去り感”をそのまま掬い上げてくれます。自分が舞台で役を演じているだけだと感じたり、何か大事なものが目を覚まそうとしては眠ってしまう気配がしたり、未来を追いながら現在を蔑ろにしてしまう自分に苦笑したり。読んでいて慰められるというより、「ああ、こういう迷い方は昔から人間の中にあったんだ」と背中を軽く押されるような感触があります。死や自我についての重たい思索も、“深刻ぶっていないのに深い”という不思議な温度で語られていて、読者の心の底に静かに沈んでいきます。 とくに、役割に追われてばかりで、自分自身を考える余白がなくなっている人に刺さると思います。道を探している途中の感覚を、そのまま抱えて読んでみるとちょうどいい一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第7章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの21%が集中しています。
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