
蟹工船
小林 多喜二
オリオンブックス / 2013-12-22
この本について
仕事でも日常でも、「理不尽だと分かっているのに、なぜかその場から抜け出せない」という瞬間がけっこうあります。自分でも納得していないはずなのに、気づけば流されている。あとから振り返って、なんであの時あれを受け入れてしまったんだろう…とモヤモヤが残るやつです。 『蟹工船』を読むと、その“流される構造”が極端な形で描かれていて、ちょっと目が覚める感じがありました。学生が「独り寝だなんて、ウマイ事云いやがって!」と騙されて連れてこられ、気づけば借金まで背負って船に乗せられているところ。越年するために身体を安く「売らなければならない」繰り返しから抜けられない漁夫たち。制度の穴を利用され、本人の意思とは別のところで選択肢を奪われていく構図があまりに生々しくて、「自分の環境って、本当に自分で選んでると言えるのか?」と考え直させられます。 しかもこの船は工場なのに法律の保護すらなく、国の“使命”という便利な言葉で搾取が正当化されていく。ここに触れておくと、仕事で「大義名分のために仕方ない」と押し切られる場面に対しても、少し距離を置けるようになる気がします。自分の違和感をごまかさずに持ち続けることの大事さを、感情ではなく具体的な状況として突きつけてくる作品でした。 いまの働き方や置かれている環境に“どこかおかしい”と感じている人ほど、静かに刺さると思います。
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