
終点のあの子 (文春文庫)
柚木 麻子
文藝春秋 / 2012-04-10
この本について
人の話を聞いていると、ときどき胸の奥がざわつくことがあります。自分とはまったく違う世界を生きてきた相手に出会ったとき、うらやましさと引け目と興味が全部いっしょくたになって、何を考えればいいのか分からなくなる感じです。強がるほど苦しくなるし、かといって距離を置くと余計に気になる。あの居心地の悪さ、けっこう共通の悩みなんじゃないかと思います。 『終点のあの子』の抜粋を読んで最初に感じたのは、その「ざわつき」をものすごく丁寧に描く作品だということでした。朱里の華やかな生活を前に、主人公が感じるくらくらするような落差。知りたくないのに目が離れない、比べてしまう自分が嫌なのに、もっと知りたくなる。ああいう気持ちの揺れを、無理に整理させようとせず、そのまま読者に手渡してくるところが印象的です。 読んでいると、自分が抱えていた「劣等感ってどう扱えばいいのか」という疑問に、少し空気の通り道ができるような感覚がありました。派手な答えは示されないけれど、誰かの背景を知ったときの距離の縮まり方とか、逆に広がる違和感とか、あの小さな変化をそのまま肯定してくれる。特別な成長物語ではなく、日常の中で少しずつ視点が変わる感じが、現実に近くて救われます。 他人の世界に触れるとき、なぜか落ち着かなくなる人に、とても静かに刺さる本だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
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