
法然対明恵 鎌倉仏教の宗教対決 (講談社選書メチエ)
町田宗鳳
講談社 / 1998-10-09
この本について
最近、「いまの生活に向き合うべきなのか、それとももっと大きな視点で生死を考えるべきなのか」という揺れが、ふとした瞬間に出てくることが多い気がします。前に進みたいと思う一方で、足元の感覚が定まらないようなあの感じです。 『法然対明恵』は、そのモヤモヤを直接言語化してくれるわけではないのですが、生の軸と死の軸のあいだで揺れ続けた二人の思索をたどることで、自分がどこで立ち止まっているのかを少しだけ掴ませてくれます。法然のように「人間に失望した末に、死の向こう側へ確かな像を求めた人」もいれば、明恵のように「どこまでも現実を離れまいとし、自然の一木一草に仏の気配を見ようとした人」もいる。その対比が、こちらの思考の癖を映す鏡みたいになるのです。 個人的に、明恵が“超越的な世界と現実の世界を断絶させることを嫌った”というくだりがずっと残りました。理想か現実か、精神性か生活か、どちらかに寄り切れずにいるとき、彼の姿勢は独特の落ち着きを与えてくれます。逆に法然の「肯定的な死のイメージで生を照らし返す」発想は、いまの不安の背景を照らす別の光になります。 とくに、答えを急がずに「自分はいま、どの軸で迷っているのか」を静かに見つめたい人に刺さる本です。
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