
薬指の標本(新潮文庫)
小川洋子
新潮社 / 1998-01-01
この本について
他人と接していると、「この人には悪気がないんだろうな」と頭で理解しつつも、なぜかずっと刺さったままの違和感ってありませんか。相手のペースに巻き込まれたり、言葉と心が一致していない気配を察してしまったりして、こちらだけが疲れてしまうあの感じです。自分が神経質なのか、ただ運が悪いだけなのか、判断できなくなるときがあります。 小川洋子さんの『薬指の標本』を読むと、その曖昧なモヤモヤに少しだけ輪郭がつきました。たとえば、圧倒的な平凡さに覆われた人との距離感や、「ごめんなさい」と言いながら何も思っていない人の空気。そういう“説明がつきにくい他者”に出会ったとき、自分の感じ方が間違っていたわけではなかったんだと、静かに確かめられます。また、痛みへの対処として水泳を勧める場面のように、体と心の変化を淡々と描く筆致が、こちらの感情まで整えてくれる瞬間があります。 物語として劇的な救いがあるわけではないけれど、日常の中で言葉にしづらい不快さや不安を抱えたまま生きている人には、そっと寄り添ってくれる一冊だと思います。こんな人に刺さるはずです。人間関係の“説明できない違和感”をそのまま抱えて歩いている人。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
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