
ドグラ・マグラ(上) (角川文庫)
夢野 久作
講談社 / 2024-01-15
この本について
日常の中で、自分の考えや記憶に急に自信がなくなる瞬間ってありませんか。何かを判断しようとしても、どこまでが自分の意思で、どこからが思い込みなのかよく分からなくなるあの感覚です。忙しくしていると流してしまいがちですが、あの揺らぎってけっこう根深いところに触れている気がします。 『ドグラ・マグラ(上)』を読むと、その揺らぎが一気に表面化します。作中で主人公が味わう「自分が何者かわからない」という混乱は、誇張ではなく、むしろ私たちの日常の延長にあるように感じました。隣室の少女の叫び声が細くなっていく描写や、「返事をしてはいけなかった」と呟く場面は、状況そのものよりも、“判断の根拠が崩れる瞬間”を突きつけてきます。読みながら、自分の思考の土台をそっと揺らされるような、不思議な居心地の悪さが残ります。 面白いのは、この物語が単に恐怖を煽るのではなく、読み手自身の視点を少しずらしてくれる点です。自分の記憶や価値観を「当たり前」として扱っていたところに、別の可能性を差し挟まれると、物事の見え方そのものが変わってきます。これは仕事の判断にも人間関係にも意外と効いて、固まった解釈を一度外す練習になる感じがしました。 自分の思考の足場を疑ってみたい人に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
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