
蔵書の苦しみ (光文社新書)
岡崎 武志
光文社 / 2013-07-20
この本について
本を好きで好きで仕方ないのに、部屋の隅で積まれたままの山を見て、ふと「自分はいったい何を集めているんだろう」と立ち止まることがあります。読みたい気持ちと、置ききれない現実。そのあいだで揺れ続ける自分に、どこか後ろめたさを覚えることもあると思います。 『蔵書の苦しみ』は、そのモヤモヤをいったん受け止めてくれる本です。登場するのは、荷風の「明窓浄机」から、若き日の谷沢永一の三畳間、さらに古本屋が本を手放すときの「子牛を手放す気分」まで、本と人がともに過ごした具体的な時間ばかり。誰もがスッキリ片づけられた書庫を持っているわけじゃないし、蔵書は必ずしも整理整頓の結果ではない。むしろ混沌のなかでこそ、自分にとっての「必要な五百冊」が浮かび上がるのだと感じます。 また、本を集める行為に振り回されているようで、実は日々の憂鬱をほんの少し軽くしてくれる瞬間もたしかにある。著者が描く「十七冊買って袋の重さが指に痛いほど伝わると、さっきまでの憂鬱が和らぐ」という場面は、思わずうなずかされます。蔵書と暮らすとは、こうした小さな救いを拾い続ける営みでもあるのだと気づかされます。 自分の本棚に「説明のつかない愛着」を抱えている人にこそ、そっと届く一冊です。
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