
ジュリアス・シーザー (光文社古典新訳文庫)
シェイクスピア and 安西 徹雄
新潮社 / 1968-03-27
この本について
最近、誰の言葉を信じて動けばいいのか、わからなくなる時があります。職場の空気や世論みたいなものが、気づけば自分の判断を上書きしていたりして、なんだか落ち着かない。周りの反応ばかり気にして、肝心の「自分の目」が曇っていく感じです。 『ジュリアス・シーザー』を読み返すと、このモヤモヤの正体が少し見えてきます。群衆の気まぐれが権力を揺らし、友と信じた相手が本物とは限らず、誤解ひとつで判断を大きく誤る。あの世界の登場人物たちが抱える不安や迷いは、やり方こそ違えど、今の私たちにも普通に起きていることだと思います。特に「自分の姿は自分では見えない」というくだりは、他人の視点をどう扱うかを考えるうえで避けて通れません。 この作品が効くのは、勇気づけられるからというより、判断に関わる風景を少し立体的にしてくれるからです。群衆の揺らぎを見ていると、環境のノイズに振り回される自分を俯瞰できるし、ブルータスとキャシアスのすれ違いを見ていると、「説明不足のまま善意で動く危うさ」に妙に思い当たる。感情でも論理でも割り切れない場面ばかりで、逆にそこで自分の癖が透けて見えてきます。 刺さるのは、周りの声と自分の判断の境界でいつも迷ってしまう人。ドラマとして読むだけでも十分面白いのに、気づけば今の人間関係や仕事の判断にもそのまま重ねてしまう一冊です。
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