
マクベス (光文社古典新訳文庫)
シェイクスピア and 安西 徹雄
グーテンベルク21 / 2004-02-17
この本について
仕事でも人生でも、判断のたびに「これでいいのか」と足がすくむことがありますよね。やりたい気持ちはあるのに、実行となると急に弱気になったり、逆に焦って余計な一歩を踏み出してしまったり。自分の中の欲や恐れの扱い方が、いつまで経ってもつかめないまま時間だけが進んでいく感じ、けっこう共通の悩みだと思います。 『マクベス』を読むと、その揺れが極端なかたちであぶり出されます。「意志がどれほど速くても、実行が伴わなければ先を越される」「罪のない花を装いながら、その陰にヘビでいなくてはならぬ」など、善悪というより“人が追い詰められたときの心の動き”が、やけに現実的なんです。どん底に落ちきればまた上がってくる、という一文なんかは、感情の波に呑まれている時ほどしみますし、「怖いのは事実よりも想像のほう」という場面も、日常の不安にそのまま置き換えられます。 この作品は、立派な教訓を与えてくるタイプではありません。ただ、人の弱さや野望のねじれ方を真正面から置いてくれるので、自分が今どの段階に立っているのかを少しだけ客観視しやすくなる。その距離感がちょうどいいんですよね。 とくに「やりたい気持ちはあるのに、踏み出す勇気と踏みとどまる理性のあいだで揺れている人」には、静かに刺さると思います。
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