
史上最高に面白いファウスト (文春e-book)
中野和朗
文藝春秋 / 2016-10-14
この本について
仕事でも人生でも、目の前のことに集中しきれないときってあります。やるべきことは分かっているのに、どこかで「本当にこれでいいのか」と立ち止まってしまう感じです。僕もよくそこで迷うのですが、『史上最高に面白いファウスト』を読んでいると、そういう停滞そのものが人間らしさなんだと少しだけ思える瞬間がありました。 この本が面白いのは、ファウストの「野心」や「衝動」を、善悪で割り切らずに真正面から描き直してくれるところです。たとえば海を干拓して楽園をつくろうとする晩年のファウストの姿は、理想というよりも執念に近い。それでも彼が主導権を取り返し、空虚な世界への恐怖を押し切って進もうとする描写は、こちらの行き詰まりとどこか地続きに感じられます。また、ゲーテ自身が体制への懐疑を抱えながら書いたという背景を知ると、「正しさ」に縛られて動けなくなる瞬間への目線も少し変わります。 そして終盤、救済をもたらすのが神ではなく、あくまで「永遠にして女性的なるもの」であるという解釈が、この作品をただの神話劇から、人間の弱さごと抱える物語に引き戻してくれます。完璧じゃなくても前に進むこと自体に価値があるのかもしれない、と静かに思わせてくれるんです。 自分の衝動や迷いを、無理にきれいに説明しなくていいんだと感じたい人に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
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