
映画館と観客の文化史 (中公新書)
加藤幹郎
この本について
映画って、いつの間にか「映画館でスクリーンを見るもの」と思い込んでいました。でも最近、配信で一人で観る時間が増えるほど、そもそも自分は何を“映画体験”だと思っているのか、なんとなくモヤモヤすることが増えました。作品そのものは語れても、観る場所や観客の側の歴史についてはほとんど知らないままなんですよね。 この本は、まさにその“観客側の歴史”をていねいに掘り起こしてくれます。映画館が宮殿のような空間だった時代、映画がまだヴォードヴィル劇場の珍奇な出し物のひとつだった時代、さらにはレストランやロビーで音楽目的で映像を流す「サウンディーズ」まで出てきて、映画という装置がどれだけ多様だったかが見えてきます。映画は作品以前に、どこで誰とどう観るかによって姿を変えてきたのだとわかると、自分が普段ふつうだと思っている前提がけっこう揺らぎます。 読んでいてとくに刺さったのは、映画が写真や絵画よりも演劇に近いという視点でした。上映される場所があってはじめて立ち上がる存在なのに、一度作られた映像は同一のまま反復される。このアンバランスさを知ると、映画館で座っている時間の意味が少し変わってくるんです。配信での鑑賞も含め、今の自分の“映画との距離感”をもう一度考えたくなる本でした。 映画を作品だけでなく「観る環境まで含めて理解したい人」にとても向いています。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの24%が集中しています。
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