
世にも奇妙なマラソン大会 (集英社文庫)
高野秀行
この本について
仕事の合間にニュースを見ては、世界のことを理解したつもりでいるけれど、実際にはどこまで本当なのか自信が持てない。あるいは、自分の常識が別の場所では全然通用しないんじゃないか、という漠然とした不安。そういうモヤモヤを抱えているときに、高野秀行さんの『世にも奇妙なマラソン大会』はちょっと効いてきます。 この本の面白さは、旅の珍事件を読む楽しさとは別に、思い込みを揺さぶられる瞬間が何度もあることです。たとえば「深酒した翌朝に走ったらアルコールが抜けて爽快だった」というような、偶然からの気づきが平然と書かれているのに、どこか妙に納得してしまう。世界標準の英語とは何か、国境の線が誰の都合で引かれてきたのか、そういう“当たり前”があっさりひっくり返されるのも、読みながら少し笑ってしまうポイントでした。 そして、遠い国の政治や紛争を扱っていながら、悲劇をドラマチックに盛らず、住民がどんな理不尽を押しつけられているかを淡々と書く。その距離感が、逆に自分の中の思考のクセを浮き彫りにしてくれます。きれいな答えは出てこないけれど、「物事を一方向からしか見ていなかったかもしれない」という静かな気づきが残る一冊でした。 自分の常識が疑わしく感じる人や、世界の複雑さに少しだけ現実的な目線を持ちたい人に、特に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
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