
森は海の恋人
畠山重篤
文藝春秋 / 2006-09-10
この本について
仕事でも生活でも、目の前のことに気を取られて、全体のつながりを見失う瞬間ってけっこうあります。効率を上げても空回りしている感じがしたり、自分の行動がどこにつながっているのか分からなくなったり。僕もよくそうなるタイプで、そんな時にこの本を読むと、視野がひとつ広がる感覚があります。 『森は海の恋人』が面白いのは、「海を豊かにするのは海の努力だけじゃない」という当たり前のようで見落としがちな事実を、具体的な現場で示してくれるところです。抜粋にもありますが、牡蠣が育つ背景には、山の腐葉土から流れ出す鉄分やミネラルがあって、川を通って海に届いている。川が一本欠けるだけで生産が九割落ちる、という話はなかなか現実的な衝撃があります。目に見えないつながりが、実際の生き物の数や味にまで直結しているわけで、それを知るだけで「部分だけを見て判断する怖さ」が腑に落ちるんですよね。 もうひとつ強く残るのは、漁民が植林に乗り出し、農家や市民まで巻き込んで流域全体で環境を考え始めたところです。大きな理念というより、「自分たちの暮らしを守るには、実は離れた場所も同じ線上にある」という気づきから動き始めた感じがあって、背伸びしていないのに力強い。自分の仕事や生活のつながりも、こうやって見直せるんじゃないか、と素直に思えます。 目の前の問題だけ追いかけて疲れがちな人に静かに刺さる本です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
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