
屍者の帝国 (河出文庫)
伊藤計劃 and 円城塔
河出書房新社 / 2014-11-06
この本について
仕事でも日常でも、答えのないことを考え続けてしまう時期ってありますよね。考える時間だけは増えるのに、材料が足りなくて同じところをぐるぐる回ってしまう感じ。あの「考える内容の方がない」という感覚に、妙に覚えがある人は多いと思います。 『屍者の帝国』は、そんな停滞を強引にこじ開けてくる本でした。死者が労働し、間諜として使われ、帝国の思惑の中を動き続ける世界。その中で人間とは何か、生命とは何か、といったテーマを、教科書的にではなく、具体的な風景や会話を通して突きつけてきます。例えば「死者は色々と忙しい」という一文の冷たさと滑稽さが同時にくる感じや、「ありがとう、と送り出す」という死者への向き合い方の素朴さなど、読者が保存した部分には、現実の自分の態度を静かに揺らす要素が多いと感じました。 物語としてのスケールは大きいけれど、効き方は意外と日常的で、自分が他人の物語をどう扱っているか、とか、生きているということをどう定義しているのか、とか、普段は棚に置いたままの問いがふっと浮かび上がってきます。特に「一度立ち止まって、自分の前提を確かめたい人」にはしっくり来る一冊だと思います。 派手に人生を変える類の作品ではありませんが、読後、世界の縁が少しだけ違う形で見える。その微妙な変化がほしい時に、ちょうどいい距離感の本でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの61%が集中しています。
読書の順序
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