
私とは何か 「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)
平野啓一郎
講談社 / 2012-08-13
この本について
人と話す場面ごとに、態度や口調が変わる自分に後ろめたさを覚えることってありませんか。家では穏やかなのに、職場では妙にかしこまってしまうとか、ある人の前では急に不安が強くなるとか。「どれが本当の自分なんだろう」と考え始めると、少ししんどくなりますよね。僕もずっとその沼にいました。 この本が面白いのは、その揺れを「矛盾」ではなく「前提」として扱ってくれるところです。相手ごとに違う自分が出てくるのは、意志の弱さではなく、そもそも人間が他者との相互作用で形づくられる存在だからだ、と。特に「ネガティブな自分も半分は相手のせい」という視点は、妙な自己嫌悪から少し距離を取らせてくれました。また、「一つの分人が不調でも、別の分人を足場にすればいい」という考え方は、仕事でつまずいた日の帰り道にじわっと効いてきます。 もうひとつ大きかったのは、愛や好意を“相手といるときの自分が好きかどうか”で捉える視点です。誰かと過ごす時間が心地よい理由を、相手の魅力ではなく、そこで立ち上がる自分の姿から説明されると、人間関係を見る角度が変わります。 一つのキャラで生きようとして疲れている人、自分のブレに悩んでいる人には、とても静かに効く本だと思います。
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