
ある男 (コルク)
平野啓一郎
コルク / 2018-09-28
この本について
誰かの「過去」が分からないまま一緒に生きていて、ふとした拍子に胸がざわつくことってありませんか。家族でも友人でも、言葉で説明された過去と、その人を形づくった本当の過去が必ずしも一致しない。でも、それをどう扱えばいいのかは誰も教えてくれません。 『ある男』は、そのもやもやを無理に晴らすんじゃなくて、「人はそもそも他者を通してしか自分を理解できない」という前提に、静かに目を向けさせてくれる小説でした。人間をカテゴリーに回収したくない気持ちとか、他人の傷に触れたときだけ奇妙に自分が救われる感覚とか、そういう“言いにくいけど確かにあること”が丁寧に置かれていて、読みながら何度も足を止めました。そして、愛情って過去の真偽だけで成立するわけじゃない、むしろズレや噓の上に後から育つ関係もあるんだと気づかされます。 もう一つ、この本が優しいのは、人間が他人の不幸や罪をどう扱うかを、国家や制度の視点まで広げて考えさせてくれるところです。誰かを一つの属性に括って片付けたい衝動に抗うには、こんな物語が必要なのかもしれません。 「他人の物語と自分の境界がよく分からなくなる瞬間がある人」に特に刺さると思います。私自身、読み終えてもしばらく、自分の中に沈殿していた言葉がゆっくり攪拌され続けていました。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの28%が集中しています。
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