
憤死 (河出文庫)
綿矢りさ
河出書房新社 / 2015-03-06
この本について
人間関係で「なんかおかしい」と感じながらも、うまく言語化できないまま飲み込んでしまうことってありますよね。相手のペースに巻き込まれていたのか、自分が勝手に思い込んでいただけなのか、その境界がどんどん曖昧になっていくあの感覚。個人的にも一度ハマると抜け道が見えなくなるタイプなので、読んでいて妙に胸がざわつきました。 『憤死』は、誰かの心を支配する力学をここまで冷静に描くのか、と驚く小説です。抜粋にもあるように、自己開示を利用して距離を詰めたり、不安と安心を交互に与えて依存を作ったり、関係を断つタイミングまでも計算に入れたり……普段は「そんな極端な人いないでしょ」と思いがちな行動が、じわじわとリアルに迫ってきます。読むうちに、自分が誰かにしてしまっていた小さな操作や、逆にされていた違和感の正体が少しだけ見えてくるんですよね。 同時に、人はどれだけ親しい相手でも「本当に話したいこと」はなかなか言えない、という指摘も刺さります。相談相手がいないのではなく、むしろ近すぎて話せない。そういう孤独みたいなものが物語に静かに流れていて、読後に変な安心感が残りました。自分だけが不器用なんじゃないのかもしれない、と。 人間関係の「微妙な支配」を見抜きたい人や、他人との距離感にずっと悩んでいる人に特に響くと思います。小説としての読み応えがありつつ、日常の風景が少し違って見える、そんな一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの33%が集中しています。
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