
「社会」の誕生 トクヴィル、デュルケーム、ベルクソンの社会思想史 (講談社選書メチエ)
菊谷和宏
講談社 / 2011-08-10
この本について
人と社会の距離感がつかみにくい時期ってありますよね。仕事で組織の波に巻き込まれたり、社会の空気がざわつくと、自分の足場がどこにあるのか急にわからなくなる。個人として考えたいのに、社会の動きに揺さぶられてしまうあの感覚です。 この本が面白いのは、「社会ってそもそも何で成り立つのか」を、トクヴィル、デュルケーム、ベルクソンの思索をたどりながら立体的に描き直してくれるところです。自殺率が危機の最中だけでなく、繁栄の最中でも上がる理由をデュルケームが説明するくだりや、ベルクソンが“閉じた社会”を超えようとした発想を読むと、社会を単なる「外から自分を縛る仕組み」として見るだけでは足りないことが腑に落ちてきます。社会が強すぎても弱すぎても人はしんどくなるという視点は、職場やチームでの違和感にもそのままつながります。 そしてもう一つ刺さるのは、社会を「義務による統合」ではなく「人間性への愛による統合」として捉え直す試みです。これは綺麗ごとというより、対立が複数の軸で噴き出すドレフュス事件のような現実から出てきた議論で、今の分断をどう理解するかにも少しヒントがある気がします。 自分の立ち位置が揺れがちな人、社会の“空気”に飲まれやすいと感じている人には、静かに効いてくる一冊だと思います。
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