
意味がなければスイングはない (文春文庫)
村上春樹
この本について
仕事でも文章でも、なんとなく「自分の色って何なんだろう」と立ち止まる瞬間ってありますよね。うまく言語化できないまま、周りに合わせて形だけ整えてしまうこともあって、あとから「悪くないけど、何か足りない…」という感覚だけが残る。僕自身もずっとその繰り返しでした。 村上春樹の『意味がなければスイングはない』を読んでいて刺さったのは、「固有性って、そんな派手なものじゃなくてもいいんだ」と静かに背中を押されるようなところです。スガシカオの音楽を分析する章では、技巧よりも“制度的なもたれかかりのなさ”や、“闇”や“手さぐり”のような触感の言葉が世界を支えている、と書かれていて、表現ってこういう地味な積み重ねで立ち上がるんだよな、と腹に落ちました。また、シダー・ウォルトンを語る箇所では、目立たなくても真摯に細部を掘り続ける人の価値が淡々と描かれていて、「派手じゃなくても、自分のペースで積み上がるものはある」と思わせてくれます。 この本は決して“人生を変える”タイプではありませんが、表現に関わる人間が避けて通れない「らしさって何か?」という問いを、急かさず、でも確かに揺らしてくれます。自分の仕事にもう少し手触りを取り戻したい人には、じんわり効くと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの61%が集中しています。
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