
カント (講談社学術文庫)
坂部恵
岩波書店 / 2015-03-20
この本について
考えごとが増えてくると、「結局、自分はどんな世界の見方をしているんだろう」と立ち止まる瞬間があります。価値観も正しさも、人によって言うことが違う。かといって全部を相対化すると、自分がどこにも立てなくなる。このあたりの揺れは、読書好きほど頻繁にやってくる気がします。 坂部恵『カント』を読んでいて感じたのは、その揺れにいったん踏ん張りをつくってくれる本だということです。たとえば、理性がつくりだす「存在者の全体」という発想に向き合うと、世界をどう体系化するかは無限にありえるけれど、だからといって何に寄りかかってもいいわけではないことがわかってきます。また、カントの初期から晩年まで通底する“対立する主張を調停しようとする姿勢”に触れると、白黒つけようと焦るより、自分の判断の前提を一度見直すほうが落ち着く、という感覚がじわっと出てくるはずです。さらに、『判断力批判』における反省的判断力の説明に触れると、与えられたルールでは捉えきれない状況に対して、自分がどう普遍性を見つけていくかというテーマが、急に現実の問題として立ち上がってきます。 哲学書というより、「考え方の姿勢」を引き取らせてくれる一冊でした。特に、価値観がゆれやすい時期に、自分の足場を探している人にはしっくりくると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
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