
中世哲学入門 ――存在の海をめぐる思想史 (ちくま新書)
山内志朗
岩波書店 / 2025-10
この本について
中世哲学に触れようとすると、まず「訳語が全部平坦で、何を言っているのか掴めない」という壁にぶつかりませんか。自分も同じで、スコラ哲学のテキストを開いては、意味の霧に迷い込んで閉じる…を何度もくり返していました。わからなさにイラつくし、それでも気になる。その往復に疲れた頃に、この本に出会いました。 山内さんの説明は決してやさしい整理ではなく、「なぜわからないのか」から一緒に掘り下げてくれる感じがあります。たとえば、ラテン語が持っていた三項関係が日本語に訳された瞬間に蒸発してしまうこと。存在や実体がただの単語ではなく、それぞれ起伏のある概念だったこと。そういう構造的な“読めなさの理由”が少しずつ見えてくるだけで、テキストとの距離が変わりました。また、アヴィセンナの存在偶有性説の扱いのように、思想史の流れそのものが揺れていることも正直に示してくれるので、「自分だけ迷っているわけじゃない」と肩の力が抜けます。 完全に理解できなくても、ときにはお経のように眺めていいという姿勢も救いでした。哲学を読むときの構え方そのものを調整してくれる本だと思います。 中世哲学を「難しいから後回し」にしてきた人ほど、じんわり効く一冊です。
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