
心理試験
江戸川 乱歩
千歳出版 / 201511
この本について
人の言葉って、聞こえているようで実はぜんぜん掴めていなかったりしますよね。相手の「極彩色」の感情の動きを感じ取れず、こちらの「成心」が先に立ってしまう。日常でも、そんなすれ違いが地味に疲れを生むことがあって、どう向き合えばいいのか迷うことがあります。 江戸川乱歩の『心理試験』を読むと、そのモヤモヤに少しだけ光が当たります。保存されていた抜粋を見る限り、読者が惹かれているのは物語のトリックよりも、言葉の肌触りや細部の「微に入り細に」描かれる心理の揺れのほうなんじゃないかと思います。人物の「疎漏」や「狼狽」が、文章のなかで生々しく立ち上がってくるので、普段見えない“心の綻び”みたいなものが実感として掴めるんです。 もうひとつ効くのは、登場人物たちの判断のズレが、決して特別な人たちだけのものではなく、自分にも起こり得ると気づかされるところです。「知悉しているつもりで実は知らない」とか、「毫も疑わないまま流される」とか、そういう小さな転び方が積み重なると、人は簡単に思い込みへ傾いてしまう。そのプロセスが丁寧に描かれていて、読み終わったあと、他人の行動にも自分の感情にも、少し距離を置いて眺められるようになります。 物語を楽しみつつ、人の心の綾を言葉から読み解く感覚を味わいたい人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第5章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
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