
霧のむこうに住みたい (河出文庫)
須賀敦子
河出書房新社 / 2014-09-08
この本について
仕事でも日常でも、考えすぎて手が止まることがあります。筋道を立てて進みたいのに、寄り道ばかりしてしまう。あるいは、過去の記憶が急にせり上がってきて、思考の邪魔をする。そんなときに、自分の歩き方そのものが間違っているのではと不安になることがあります。 『霧のむこうに住みたい』を読んで感じたのは、寄り道や回想の散らかりが、そのまま「ものを考える自然な姿」なんだと肯定してもらえる感覚でした。須賀敦子さんが、時間や記憶をすぐ一本の線にしようとせず、駅で拾われそこねた時間まで丁寧に見つめていく姿に、ああ、急がなくていいんだと思わされます。文章が生まれる過程がそのまま読者の思考にも響いてきて、過去の断片が別の意味を帯びる瞬間に立ち会えるのも、この本ならではでした。 ゆっくり考えることには時間がかかるし、現代向きじゃないかもしれない。でも、その遅さの中でしか拾えない感覚がある。そんな当たり前のことを、イタリアの景色や人々とのやりとりを通して思い出させてくれます。 自分の思考の寄り道を責めがちな人、あるいは「どうしても一本の線で語れない」と悩んでいる人には、静かに効いてくる本だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第9章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
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