
いつもが消えた日 お蔦さんの神楽坂日記 (創元推理文庫)
西條 奈加
東京創元社 / 2016-08-19
この本について
仕事でも日常でも、誰かに助けられながら何とか回しているのに、いざ自分が誰かに返せることって何だろう…と考えてしまう時があります。優しさを受け取るのはうれしいはずなのに、どこかで「自分は何もできていない」と落ち着かなくなる、あの感じです。 『いつもが消えた日 お蔦さんの神楽坂日記』を読んでいて、読者の方が保存していた「助けてもらったから、今度は迷子を助けたい」という一文に強くうなずきました。このシリーズは事件や謎を扱いながらも、人と人のつながりが無理なく描かれていて、恩を返すとか、誰かを支えるとか、そういうことを大げさに語らないのに自然と考えたくなる空気があります。返報性の義務じゃなく、日々の暮らしの延長として「自分もこういうふうに関われるかもしれない」と思えるんです。 この本が効いてくるのは、まず、人の優しさに対して身構えがちな人が、その循環を肩の力を抜いて受け取れるところ。さらに、お蔦さんや周囲の人々のささやかな気づかいが、こちらの感情のほつれを静かに整えてくれるところ。そして、物語としての面白さがあるからこそ、生き方の話を押しつけられている感じがしないところです。 届いてほしいのは、「誰かの役に立ちたいのに、何をしていいかわからないまま日々が過ぎていく人」。迷子のままでもいいし、歩き始めてもいい。そう思わせてくれる物語でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの67%が集中しています。
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