
さいはての彼女 (角川文庫)
原田 マハ
KADOKAWA / 2013
この本について
仕事がうまく回っているときほど、「このまま全部うまくいくはず」と思い込んでしまって、少しのつまずきで一気に視界が狭くなることってありますよね。気づけば誰にも弱音を出せず、戻り方もわからないまま、ただ毎日をこなしてしまう感じ。僕もときどきその渦の中に落ちてしまいます。 『さいはての彼女』は、そんな“行き場のなさ”を抱えたまま働いている人に、不思議なくらい静かに効いてきます。立ち直り方を説くわけでもなく、人生を前向きにしろと背中を押すわけでもない。ただ、登場人物たちがそれぞれの喪失や気まずさや限界を抱えたまま旅をし、風景の中で呼吸を取り戻していく。その姿を追っているうちに、自分の中の硬くなっていた部分が少しゆるむんです。例えば「一時間後に立ち直っている自分を想像できるか」という問いや、「人生の真昼でも黄昏でもない、けだるい午後三時」を旅している感覚は、今の自分の場所をそのまま肯定してくれるようでした。 とくに、思い通りに生きられる人なんてほとんどいないという一文や、“越えられない線”は外ではなく自分の中にあるという気づきは、焦りがちな心をそっとほどいてくれます。大きな事件が起きる物語なのに、最終的には「自分ももう一度、ちゃんと歩けるかもしれない」と思わせてくれる、不思議な後味の本でした。 仕事に追われすぎて、自分の立ち位置が見えなくなっている人に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの28%が集中しています。
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