
武道館 (文春e-book)
朝井リョウ
文藝春秋 / 2018-03-09
この本について
何を選べばいいのか、もうよく分からなくなる瞬間ってありますよね。無料で何でも手に入るぶん、自分が本当に欲しいものや、大事にしたいものの輪郭がぼやけていく感じ。誰かの幸せを願いたいはずなのに、いつのまにか「誰かの失敗」に惹かれてしまう自分に気づいて、ふと嫌になるときもあると思います。 『武道館』は、アイドルの話ではあるんですが、「選ぶこと」と「好きでい続けること」のしんどさに真正面から触れてくる小説でした。たとえば、何かを選んで、それを自分の手で“正しかった選択”にしていくしかないという感覚。流されるんじゃなく、選んだ結果に向き合う苦さと潔さが、妙に現実とリンクします。また、誰かのタブーや失敗が表に出た瞬間、それまで積み上げた価値がゼロになるような世界で、それでも「私は何も変わっていない」と言い張る登場人物の姿が、人間関係や仕事での孤独にそのまま重なるんですよね。 そして意外と刺さったのが、「怒りは、その人の器の形をさらけ出す」という場面でした。自分が何に怒るのかって、実は自分がどんな人間なのかを教えてくれる。それを外にぶつけた瞬間に器がいっぱいになる描写は、普段の生活でも思い当たる人が多いはずです。 推しやアイドルが好きな人だけじゃなく、「自分の選択の意味を見失いがちな人」に静かに効いてくる物語だと思います。迷っている途中の人ほど、この揺れをそのまま受け取れるはずです。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの27%が集中しています。
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