
木挽町のあだ討ち
永井紗耶子
新潮社 / 2023-01-18
この本について
最近、自分の中の「こうありたい」と現実の折り合いがつかなくて、気持ちの置き場がわからなくなることがよくあります。筋を通したい気持ちはあるのに、状況に流される自分もいて、そのどちらが正しいのか決めきれないまま日々が過ぎる。たぶん、同じように迷っている人は多いんじゃないでしょうか。 『木挽町のあだ討ち』を読んでいて印象的だったのは、登場人物たちが“迷いを抱えたまま生きている”ところでした。義を貫くことの難しさも、割り切れなさも、恥でも弱さでもなく、人が生きる姿そのものとして描かれている。特に、己の想いに従いつつも誰かを頼る必要に気づいていく場面があって、「覚悟って、ひとりで背負うことじゃないんだな」と静かに視点が変わりました。さらに、歌舞伎の世界で男でも女でもない“型”に身を置く人物の描写が、肩書きや性別に縛られがちな自分の感覚をほぐしてくれました。世間の枠からこぼれても、生き方としての強さはちゃんと残るんだな、と。 この本は、何かを成し遂げようとしている人よりも、「今のままじゃない気がするけど、どう動けばいいかはまだ言葉にならない」という人にこそ響く気がします。迷いを抱えた自分を否定しないまま、少しだけ前に進むための勇気をもらえる一冊でした。
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