
存在のすべてを
塩田 武士
朝日新聞出版 / 2023-09-07
この本について
仕事でも人間関係でも、一度走り出した道を「このままでいいんだろうか」と思いながら、引き返す理由も勇気も見つからないまま続けてしまうことってありますよね。私も同じで、積み重ねた時間を否定したくなくて、気づけば視野が狭くなっている瞬間があります。 『存在のすべてを』を読んで感じたのは、迷いの只中にいるときの“人間の揺れ”を、事件と芸術の世界を通して静かに照らしてくれる物語だということです。たとえば「立ち止まることが怖い」という心理が丁寧に描かれていたり、真理より地位に向かってしまう大人の弱さが容赦なく映し出されていたり、逆に犯罪の裏側にある意外なほどの愛情が見えたりする。どれも劇的な言葉ではなく、日常の延長にある感情として描かれているから、自分の生活や葛藤にそのまま重ねられるんです。 とくに、門田が取材の中で半歩ずつ前に進んでいく感じや、貴彦が芸術と生活の間で何度も揺れながら、自分の「正しさ」を探し続ける姿は、立場は違ってもどこか他人事に思えませんでした。何かを選ぶたびに「これでよかったのか」と自問する人ほど、刺さるものがあると思います。 今の自分の歩みが合っているか分からないまま、それでも前に進んでいる人に。派手な答えはなくても、心の奥のざわつきが少し整うような一冊でした。
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多くの読者は第4章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの17%が集中しています。
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