
この人を見よ (光文社古典新訳文庫)
ニーチェ and 丘沢 静也
講談社 / 1973-02-15
この本について
なんとなく、自分の判断や価値観が「借り物」になっている気がする時ってありませんか。誰かの正しさに合わせるほど、生きやすさよりも窮屈さのほうが先に来てしまう感じ。その一方で、じゃあ自分の基準って何なんだろう、と考え始めると、途端に霧の中に放り出されたようにもなる。僕もずっとその往復のなかでもがいてきました。 『この人を見よ』が面白いのは、ニーチェがそこでいきなり「正しい道」を教えようとしないところです。むしろ、自分の中に育っていくものをどうやって邪魔せずに待つか、という姿勢のほうが強い。大げさな言葉に飛びつかず、アイデアがゆっくり形をつくるのを見守る態度。あるいは、自分に余計な攻撃を浴びせないために「ノーを言い続けない場所から離れる」という、現実的で生活に落とし込みやすい感覚。読んでいると、価値観を塗り替えるというより、行動の筋肉の使い方が少し変わるような読後感があります。 一方で、人間や道徳を突き放すような表現も多いのに、不思議と冷たさを感じないのは、「ルサンチマンから魂を自由にする」という視点が通底しているからかもしれません。敵意に反応し続ける疲れを知っている人ほど、この部分がやけに静かに染みる気がします。 自分の価値観をつくり直したいけど、自己啓発のテンションには乗れない──そんな人に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの24%が集中しています。
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