
犯罪者 上 (角川文庫)
太田 愛
KADOKAWA / 2017-01-25
この本について
仕事でも人間関係でも、「急いで何かしなくちゃ」と思い詰めて、あとから冷静になると自分でも驚くような選択をしていた…そんな経験、けっこうあるんじゃないでしょうか。正しさに駆られた行動ほど、実は状況を悪化させることがある。でも、迷っている最中はそれ以外の方法が見えない。そんなときの焦りや孤独って、言語化がむずかしいですよね。 太田愛さんの『犯罪者 上』は、その“性急さに追い詰められる感じ”を丁寧に描き切っています。抜粋にもあるように、主人公が自分の良心に追われて空回りしていく姿は、犯罪サスペンスという枠を超えて、日常の判断にも重なるところが多いです。銀杏並木の描写や、立川競輪やアオケイといった生活の匂いがする固有名詞が散りばめられていて、物語の中で登場人物たちが「現実の中でどう動けるか」だけを必死に探しているのが伝わってきます。 読んでいて救いなのは、この物語が“勇気を持て”と背中を押してくるタイプではないところです。むしろ、自分の善意が暴走するときの危うさや、誰かを守りたい気持ちの裏にある限界を静かに見せてくれる。その分、読後に少し落ち着いて物事を考える余白が生まれます。焦りながらも「いまの判断は本当に最善なのか」と一歩引いて見たい人には特に刺さると思います。 迷いながら動くしかない時期に、そっと現実の見方を変えてくれる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第3章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの56%が集中しています。
読書の順序
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