
鹿の王 1 (角川文庫)
上橋 菜穂子
KADOKAWA / 2018-12-15
この本について
最近、自分でも気づかないうちに心のどこかが削れてきている気がすることがあります。仕事にせよ家庭にせよ、「ちゃんとやろう」と思うほど、ふとした瞬間に虚しさが顔を出す。昔ならもっと動けたはずなのに、今は気力がついてこない。そんな時期をどうにかやり過ごしている、あの感覚です。 『鹿の王』を読んでいて、抜粋された部分から伝わってくるのは、まさにその“削れてしまった心”を抱えた人たちの姿でした。故郷を失い、役目を失い、希望も先行きも見えない状況で、それでも人は生きてしまう。その過程で、「生き物はみな、病の種を身に潜ませて生きている」という言葉が、現実の私たちにも向いているように感じます。弱さを抱えたまま進むしかない時に、この物語は大げさな励ましではなく、静かに寄り添ってくれるんです。 そして、他者との関わりの中で少しずつ灯る小さな温度も、この本が読者を惹きつけているポイントだと思います。誰かを助けることが、自分の罪や喪失を帳消しにするわけではない。でも、そっと毛布をかけられたような安堵が確かに生まれる。立派な答えより、こうした“揺れながらの変化”が丁寧に描かれていて、現実にも引き寄せやすいんですよね。 少し立ち止まることが増えた人、過去の喪失とどう向き合えばいいのか迷っている人には、じんわり効く物語だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの25%が集中しています。
読書の順序
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