鹿の王 上 ‐‐生き残った者‐‐ (角川書店単行本)

鹿の王 上 ‐‐生き残った者‐‐ (角川書店単行本)

上橋 菜穂子

累計読者数6
平均ハイライト数 3.5件/人
star総合評価 34/100
boltライト読書型

この本について

最近、心と身体のズレに戸惑う瞬間ってありませんか。気持ちは元気なつもりなのに、どうにも疲れが抜けなかったり、逆に身体は動いているのに心だけ取り残されているように感じたり。理屈ではわかっていても、人間ってこんなに「自分の中の別々の要素」に振りまわされるものなのか、と立ち止まってしまうときがあります。 『鹿の王』を読むと、そのズレをただの不調として片づけられなくなります。病が身体を乗っ取り、心を追い越していく描写はフィクションでありながら、生々しい実感を呼び起こします。身体と心は同じ方向だけを向いて動くわけではない、という当たり前の事実を、物語のなかで登場人物たちがまさに“生きながら理解していく”姿に、自分の生活も重ねてしまうんです。また、「他者を生かすことで、自分も生きる」という価値観が、ただの綺麗ごとではなく、極限状況のなかで試されていくのもこの作品ならではで、助け合いをどう捉えるかの視点が静かに揺さぶられます。 そして忘れがちな「生き物はみな、病の種を抱えている」という視点も、今の不安定な社会で生きる私たちに妙な現実味を与えてくれます。完全に健康で強い存在なんてどこにもいなくて、負けるか踏みとどまるか、そのグラデーションのなかで生きているだけなんだと気づかされます。 自分の弱さや他者との関わりを“綺麗に整理できないまま”抱えている人に刺さる物語です。物語としてのスケールの大きさとは別に、自分の足元の感覚が少し変わる読み方ができるはずです。

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