
好き嫌い――行動科学最大の謎 (早川書房)
トム ヴァンダービルト and 桃井 緑美子
この本について
日常のなかで「なんで自分はこれが好きなんだろう」とか、「あの人とは好みが全然合わないな」とモヤっとすること、けっこうありますよね。仕事でも趣味でも、理由がはっきりしない好き嫌いに振り回されると、自分でもよくわからなくなってきます。 『好き嫌い――行動科学最大の謎』は、その曖昧さに少しだけ輪郭を与えてくれる本でした。読みやすいフォントより読みにくいフォントのほうが記憶に残るとか、色の好みはその色そのものより「そこから連想する経験」で決まるとか、いちいち実感とつながる話が多いんです。自分の好みは生まれつきではなく、経験の積み重ねでできた「更新され続けるモデル」にすぎないと知ると、好き嫌いに振り回されるというより、少し距離を置けるようになる感覚がありました。 美術館で心が動くとき、外の世界と自分の内側が同時に反応している、という研究の話も印象的で、好みって「性格の芯」じゃなくて、もっと動的で、環境や状況とセットで立ち上がるものなんだなと腑に落ちました。だからこそ、人と合わない瞬間があっても当然で、無理に揃える必要もないんですよね。 自分の判断のクセを知りたい人や、「なんでこれが好きなのか」を言葉にできずにモヤモヤしている人には、静かに効いてくる一冊だと思います。
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