
塀の中の美容室 (双葉文庫)
桜井美奈
小学館 / 202009
この本について
日々、自分の選択が正しいのかよくわからなくなることがあります。誰かの言葉に揺れたり、過去をどう扱えばいいのか迷ったり、行動したいのに気持ちが追いつかないこともあると思います。私もよくそこで詰まります。 『塀の中の美容室』を読んで感じたのは、「迷っているままでも前に進める瞬間って確かにあるんだな」ということでした。受刑者たちが美容を学ぶという設定は特殊ですが、そこで描かれるのはすごく身近な感情ばかりです。たとえば、髪を切ること一つとっても、忘れたい過去もあれば、抱え続けたい過去もあるという視点。前髪を下ろすか上げるかの小さな選択にだって、その人の人生がにじんでいて、そこに寄り添う描写がなんだか胸に残りました。 もう一つ良かったのは、「正しさ」を押しつけない世界の見方です。刑務所にいるからといって、その人全体を語ることはできない。良いか悪いかではなく、自分で見て、自分で判断するしかない。主人公がその現実に戸惑いながらも考え続ける姿が、私たちの日常の迷いにもそのまま重なる感じがします。狭い場所でも、その中で見える空があるという話も、状況に縛られているように感じるときにふっと効いてきます。 静かだけれど確かに背中を押してくれる物語です。環境が思うように動かなくても、自分の目で世界を見直したい人に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第5章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの31%が集中しています。
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