
濃霧の中の方向感覚
鷲田清一
晶文社 / 20190201
この本について
未来のことを考えると胸がざわつくけれど、かといって今すぐ答えなんて出せる気もしない。動きたいのに動けないまま、濃い靄の中を手探りで歩いているようなときってありますよね。僕も同じで、放っておくと「正解の形」を急いで探しに行ってしまうのですが、この本はその前の段階にそっと灯りを置いてくれる感じがしました。 印象的だったのは、答えが出ない状態にとどまるための「肺活量」という表現です。むやみに結論を急ぐのではなく、問題が増える感じすら抱えたまま立っていられる体力を養うこと。この視点に触れると、迷っている自分を少しだけ肯定できるようになります。それから、間違いをただの失敗として切り捨てず、方向感覚として持ち続けるという話も、まさに今の不透明さに必要な考え方だと思いました。失ったように感じるのに、実は何かを学んでいる。あの感覚に名前がついた気がします。 最後に、「暮らしのフォーマットを再点検する」という提案も現実的で腑に落ちました。壮大な人生論ではなく、何を手放し、何を残すかを自分の足元から考える。曖昧な時代にどう立ち続けるか、そのための姿勢をゆっくり整えてくれる一冊です。 立ち止まってばかりの自分に後ろめたさを感じている人に、静かに効いてくると思います。
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