
罪の声 (講談社文庫)
塩田武士
講談社 / 2019-05-15
この本について
仕事でも私生活でも、「過去のどこかで踏み外した何かが、今もじわっと響いている気がする」みたいな感覚ってありませんか。理由ははっきりしないのに、胸の奥だけざわつくやつです。僕もよくその状態にハマるんですが、『罪の声』を読んでいると、そのざわつきがどこから来ているのかを静かに考えさせられました。 物語は、父の遺品のカセットから“自分の幼い声”が聞こえるところから始まります。読者がよく保存していたのは、この「自分の声を聞いてしまう瞬間」と、事件の細かい時系列や証言が少しずつつながっていく場面でした。過去に向き合うって、派手なドラマじゃなくて、こういう地道な拾い上げの連続なんだよな、と妙にリアルに感じます。特に、生島一家の失踪や、電話越しの子どもの声の描写など、“誰かの日常が急にずれる瞬間”が淡々と書かれていて、読む側の心もズレを抱えたまま進むことになるんですよね。 この本が効いてくるのは、過去の積み重ねと現在の自分の距離感がよく分からなくなるときです。あのときの選択は正しかったのかとか、知らなかった事実が今の自分を壊すんじゃないか、とか。そんな不安を一気に解決してくれるわけじゃないけれど、「問い続けることでしか進めない時間もある」と教えてくれる、現実的な手触りがあります。 過去との向き合い方を急かされたくない人、ただ静かに整理したい人には特に刺さると思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第5章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの20%が集中しています。
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