
記号論への招待 (岩波新書)
池上 嘉彦
岩波書店 / 1984-03-21
この本について
日常で誰かと話していて、「なんでこんなに伝わらないんだろう…」とか、同じ出来事を前にしても感じ方がズレてしまうことってありますよね。自分の中では“寒い”のに、相手にはその実感が届かないあの距離。そのモヤモヤの正体を言語や記号の視点から丁寧に解きほぐしてくれるのが、この『記号論への招待』でした。 読んでいて感じたのは、まず「言語は中立な道具じゃない」という事実です。一つの言語を身につけることは、一つの世界の捉え方を身につけることでもある。自分は透明なメガネをかけているつもりでも、実は文化ごとの色がついている。ふだん“自然”だと思っていた反応や価値観が、じつは言語のイデオロギーに導かれていたんだと気づくと、相手とのズレにも少し寛容になれます。 もう一つは、「表現には秩序を保つ働きと、それを揺さぶる働きの両方がある」という話。日常の言葉は世界を整理してくれる一方で、固まりすぎると“牢獄”にもなる。その殻をゆるめてくれるのが、美的な表現や創造の側面だという視点は、仕事で行き詰まったときに思い出すと救われます。 コミュニケーションに限界を感じている人や、「自分の見ている世界って本当に“本物”なの?」と一度立ち止まってみたい人に、とても静かに効いてくる本です。
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