
翻訳語成立事情 (岩波新書)
柳父 章
この本について
最近、何かを考えようとすると、そもそも自分が使っている言葉の意味が怪しく思えてくることがありませんか。自由とか権利とか自然とか、知っているつもりなのに、人によってまったく違う景色で語られている。議論が噛み合わない理由が、自分の理解力ではなく「言葉そのものの成り立ち」にあるのでは…と薄々感じている人に、この本はかなり効きます。 柳父章『翻訳語成立事情』は、いま私たちが当たり前に使っている近代語が、どんな文脈から日本語に持ち込まれ、どの段階で意味がねじれ、同じ語の中にどんな矛盾が残っているのかを淡々と見せてくれます。たとえば、ミルが“liberty”と対立させたのは“society”だったのに、日本では「自由」が国家権力との対立だけで語られがちだったり。「自然」も、nature由来の客観世界と、伝統的な“ありのまま”が一語にまとまってしまっていたり。自分がふだん当然と思っていた意味のほうが、実は翻訳の結果できた“混ぜ合わせ”だったのだと気づかされます。 読んでいると、議論の場で感じる違和感や、言葉に引きずられてしまう感覚の理由が、少しずつ輪郭を持ってきます。言葉が勝手に価値づけされ、こちらが振り回されてしまう構造を見抜けると、相手との距離の取り方も変わりますし、自分が使う言葉を一度立ち止まって点検する余裕も出てきます。 「知っているつもりの言葉に、ずっと引っかかりを感じている人」に特に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第2章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの22%が集中しています。
読書の順序
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