
働く人のための感情資本論――パワハラ・メンタルヘルス・ライフハックの社会学
山田 陽子
青土社 / 2019-10
この本について
職場で「なんとなくしんどい」のに、その理由が自分でもつかめない時ってありますよね。怒りや苛立ちが湧いても、職場では「不適切」とされて飲み込み、明るく前向きでいることを求められる。気づけば、感情の整理より“演じること”の方にエネルギーを使っている。僕自身、こういう違和感をうまく言葉にできずにいました。 『働く人のための感情資本論』は、そのモヤモヤに名前をつけてくれる本でした。たとえば、怒りがなぜ「不適切」とされるのか、その背景にある感情文化や制度まで丁寧に説明してくれるし、パワハラが単に「性格の問題」ではなく、業務フレームや評価構造の中で見えなくされていく過程まで描かれています。また、私たちが当たり前だと思っているメンタルケアが、どのように産業と結びつき、個人の問題として扱われてしまうのかも浮かび上がってきます。 この本の良いところは、解決策を押しつけてこないところです。代わりに、「自分が抱えてきた感情は、どこから来ていたのか」を理解するための地図を渡してくれる。読んだあと、職場での違和感を自分のせいにしすぎなくなりました。 職場でのコミュニケーションや感情の扱いに疲れている人に、静かに効いてくる本だと思います。
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