
漂流(新潮文庫)
角幡唯介
新潮社 / 2020-04
この本について
仕事でも生活でも、自分がどこまで踏み込んでいいのか分からなくなる時があります。やりたい気持ちはあるのに、一歩進むと世界が途切れてしまいそうで怖い。そんな感覚って、意外と誰にも説明できなくて、自分でも処理に困ります。 角幡唯介さんの『漂流』を読んでいて、保存されていた「海により精神性や死生観が形成され、境界を感じずに行き来できる人々」のくだりに、まさにその壁のなさに惹かれているんだろうなと思いました。海で生きる人たちは、境界を越えることを特別な行為として捉えていない。彼らにとっては、生と死、日常と非日常、こちら側と向こう側が地続きで、揺れながらも通いなれている道なんですよね。 この本が効くのは、その「地続き感」を取り戻せるところにあります。まず、補陀落僧の話などを通して、人が極限状態で何をよりどころにするのかが淡々と描かれていて、自分の中の恐れや曖昧さをそのまま見ていいんだと思わせてくれる。次に、漂流者たちの行動の細部が、境界を越えるとは大げさな決意ではなく、日々の選択の積み重ねなのだと実感させてくれる。最終的には、「世界は思っているより閉じていないのかもしれない」と少しだけ視界が広がります。 自分の中にある“どこまで行ってしまっていいのか”という不安が離れない人に刺さる、本当に静かな一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの50%が集中しています。
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