
あのこは貴族 (集英社文庫)
山内マリコ
幻冬舎 / 2019-05-25
この本について
東京で生きていると、自分の立ち位置がよくわからなくなる瞬間ってありませんか。努力してるつもりなのに、見えない秩序みたいなものにぶつかって、なんとなく置いていかれる感じ。あるいは、女性同士の関係が妙にギスギスして見えて、自分の気持ちまで濁っていく感じ。あのこは貴族を読んだ人が抜き出している言葉を見ると、まさにその「説明しづらい生きづらさ」に反応しているんだと思います。 この小説が効くのは、明確な解決策が書いてあるからではなく、階級やジェンダーの差が、日常の細部にどう滲むのかを静かに可視化してくれるところです。たとえば、本人は普通だと思っている“良家”の感覚が、外側から見るとどれだけ閉じているか。あるいは、地元に帰ったときの妙な懐かしさと窮屈さが、東京の上流コミュニティにもそっくり存在していることに気づかされるところ。さらに、女同士の競争心がどこから植えつけられ、どうやって自分の心を追い詰めていくのかを、誰の味方にもならず描いてくれるところ。 こういう視点を知ってしまうと、自分のモヤモヤを「個人の欠点」だと思わなくてよくなるし、他人の背景の見え方も少し変わります。とくに、なんとなく周りと比べて消耗しやすい人、育ちや環境の差を言語化できず飲み込んでしまいがちな人には刺さると思います。 自分のいる場所の“空気”に疲れたとき、距離を置いて考えるきっかけになる一冊でした。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第10章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの23%が集中しています。
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