
NHK「100分de名著」ブックス サルトル 実存主義とは何か
海老坂 武
NHK出版 / 202003
この本について
最近、人とどう関わればいいのかとか、自分の“立ち位置”みたいなものがよく分からなくなるときがあります。相手の視線を気にしているようで、でも自分の考えにも曖昧さが残る。そんな宙ぶらりんな感覚にどう向き合えばいいのか、ずっと考えていました。 この本のサルトルは、難しい哲学というよりも「他者の視線の中で自分が形づくられていく」という、日々の実感に近い話として入ってきます。労働や政治のような大きなテーマも扱われていますが、読んでみるとむしろ、職場での役割の押しつけに戸惑うときや、誰かの期待の中で息苦しさを覚えるときの“あの感じ”を説明してくれる本に思えました。自由について語りながらも、現実には他者にさらされ続ける存在としての自分をどう扱うかを考えさせてくれます。 もう一つ印象に残ったのは、サルトルが「怒り」や「関わること」を避けずに語っている点です。表面的に前向きになるのではなく、社会の不正や他者のまなざしに揺さぶられたときこそ、自分の選択が問われているのだと示してくれる。これは行動を促すというより、迷ったままでも考え続けることを肯定してくれる感覚に近いです。 自分の存在感や他者との距離に悩みがちな人には、静かに刺さる一冊だと思います。
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