
姫君を喰う話―宇能鴻一郎傑作短編集―(新潮文庫)
宇能鴻一郎
新潮社 / 2021-08
この本について
仕事でも日常でも、判断の基準がぼやけてくる瞬間ってありますよね。自分は何が好きで、何を嫌うのかさえ曖昧になって、どこか感覚が鈍ったまま過ごしてしまう感じ。そんなときに、妙に刺さるのが宇能鴻一郎の短編集でした。 この本の魅力は、まず「感覚の輪郭」を強引にでも思い出させてくれるところです。生肝の質感や匂い、モツ焼きにジュースを合わせることへの怒りまで、好悪が極端に切り立っている。読んでいると、自分の中にもこんなふうに説明しづらいこだわりや嫌悪が確かにあったなと思い出さされます。日々、何となく流されてしまう人ほど、この濃度に揺さぶられる感覚が強いはずです。 もうひとつは、価値観の「線引き」を他者に委ねない姿勢が、意外と勇気をくれるところです。誰がどう言おうと、モツにジュースは侮辱だと言い切るし、鯨神を殺した相手とは一緒に寝ない、と平然と突っぱねる。これは正しいかどうかではなく、世界の見え方を自分の手に取り戻す行為に近い気がしています。 極端な物語なのに、読後に残るのは妙な潔さで、自分の感覚を雑に扱っていたなと気づかされました。自分の「好き」「嫌だ」を少しでも取り戻したい人に刺さる一冊です。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの67%が集中しています。
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