
ナイト・ドクター(上) (扶桑社BOOKS文庫)
蒔田陽平、大北はるか
扶桑社 / 2021-07-20
この本について
忙しい現場で判断を迫られたり、人の気持ちに寄り添いたいのに余裕がなくて、自分が何を「普通」として生きているのか分からなくなることがあります。誰かの役に立ちたい気持ちと、自分の限界のあいだで揺れるあの感じです。医療者でなくても、仕事や家庭で同じような場面にぶつかる人は多いと思います。 『ナイト・ドクター(上)』は、救急の夜を舞台にしているけれど、物語の芯は「人はそれぞれ事情を抱えて生きている」という当たり前のようで忘れがちな事実でした。患者の前で悲観的なことを言わないように気を張りつつも、医療だけでは救えない命があると痛感する場面が続きます。窓の明かり一つひとつに背景があって、重症か軽症かなんて他人には測れないという視点が、仕事の悩みにもそのまま響くんですよね。 個人的にぐっと来たのは、技術や努力だけでは割り切れない瞬間に、登場人物たちがそれでも誰かのためなら動けてしまうところです。ポンコツと言われても折れずに手を動かす姿や、連絡先を削除して前に進もうとする場面に、現実的な迷いと覚悟が同居していました。医療知識の描写(橈骨、足背動脈、JCS など)も適度に入っていて、現場の「祭りと戦争が同時に起きているような」混沌がよく伝わってきます。 誰かのために動きたいのに、自分の気持ちを持て余すことがある人に刺さる一冊だと思います。
読書インサイト
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