
ケンブリッジ大学・人気哲学者の「不死」の講義
スティーヴン・ケイヴ、柴田 裕之
日経BP / 2021-12-10
この本について
ときどき、自分の死について考え始めると、頭の中が急にざわつくことがあります。仕事も人間関係も日々こなしているつもりなのに、「結局いつか終わるんだよな」と思うと、足元がふっと浮くような感じになる。こういう感覚って、誰にもあまり言えないわりに、ずっとつきまといます。 この本が面白いのは、死を避けたいという人間の願いを「弱さ」ではなく、文化や文明そのものを作り上げてきた原動力として語っているところです。ゲーテやボルヘスの言葉を手がかりに、人間だけが死を想像し、その不安をどう処理するために神話や宗教、科学、国家の仕組みまで生み出してきたのかが具体的に描かれる。たとえば始皇帝が死の話題を禁じた理由も、ただの暴君の逸話ではなく、「消える」という事実への切実な抵抗として読み直されます。 さらに、この本は「不死への道」がすべて幻想かもしれないという前提にも正面から向き合います。太陽が膨張して生命が焼き尽くされる未来まで視野に入れると、生の有限性は避けようがない。それでもなお、生きることに意味を与えようとする私たちの姿が浮かび上がってきます。読み終える頃には、死を恐れる自分を否定しなくていいんだと、少し肩の力が抜けるはずです。 「死を考えると不安になるけれど、そこから逃げるだけでもいたくない人」に静かに刺さる一冊です。
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