
特殊清掃 死体と向き合った男の20年の記録
特掃隊長
ディスカヴァー・トゥエンティワン / 2012-04-13
この本について
ふとした瞬間に、自分の人生がどこか“薄く”感じるときがあります。忙しくしていればごまかせるけれど、静かになると「このままでいいんだっけ」と落ち着かなくなる。頭では有限性なんてわかっているのに、実感としては遠いまま……その距離感がモヤモヤの正体なのかもしれません。 この本は、死亡現場を20年見てきた著者が、死を語ることで“生きる側”の視点をそっと変えてくれます。強いメッセージというより、現場で出会った人たちの言葉や、遺族のふるまい、著者自身の小さなつぶやきが続いていく。その中で、例えば「自分の無力さを知ることから始まる生き方」や、「今日一日で人生が終わると仮定したときの自分の態度」みたいな、日常の行動を少し変えるヒントが見えてきます。死を怖がる自分も、折り合いがつかないままの自分も、そのままの形で扱っていいんだと思えたのが、読んでいて救いでした。 そして、遺体を“将来の自分”として見たときの感覚や、他人の痛みに胸が動く瞬間の話など、自分と他者の境界の扱い方も静かに問い直されます。大げさな希望は示されませんが、腐りやすい心身をどう新鮮に保つかという等身大のテーマが、妙に日常へ持ち帰りやすい。 日々の生活の中で「どうしても前向きになれない時間がある人」に刺さる一冊だと思います。
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