
人間 (角川文庫)
又吉 直樹
この本について
人と関わる場面で、自分だけ声が小さい気がするとか、本当は感じていることがあるのに言葉になる前に引っ込めてしまうことってありますよね。周りの目を気にして、正直さより「無難さ」を選んでしまうあの感覚。僕自身も長く抱えてきたモヤモヤで、抜け道を探していたときに出会ったのが、この『人間』でした。 この作品の効き方は、いわゆる勇気づけとは少し違います。たとえば「叫ばなければ死ぬ状況なのに、叫べない夢」のくだりのように、情けなさも弱さもそのまま描かれる。ただ、その“情けなさ”を切り捨てずに見つめる視点が少しだけもらえる。あるいは、子どものころの祈りの場面で、父親がこっそり目を開けて変な顔をしていたように、他人の期待と、自分の正直さが入り混じる瞬間をどうやってやり過ごすかのヒントが思わぬ形で転がっている。 もう一つは、「人と違うことをやるのが恥ずかしい」という感覚に対して、本書は無理に背中を押さないところです。才能や創作について語られるシーンでも、結論なんて出ない。それでも、誰かの言葉に揺れたり、自分の声が小さくなっていく理由にうっすら輪郭がつく。そこが妙に救いになる。 自分の“声の弱さ”をごまかさずに見てみたい人に刺さる作品だと思います。
読書インサイト
ハイライト密度
多くの読者は第1章に最もインサイトを感じており、全ハイライトの38%が集中しています。
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