
難しくない物理学
野本麻紀
クロスメディア・パブリッシング(インプレス) / 2022-10-21
この本について
物理って気になっているのに、公式や計算が出てきた瞬間に「やっぱり自分には無理かも…」と引き返してしまうこと、ありませんか。自分もずっとそうで、量子とかエントロピーの話を聞くたびに興味はあるのに霧の中にいる感じが抜けませんでした。でも、この本はその霧を一気に晴らすというより、「あ、ここまでなら歩けるかも」と思わせてくれる温度なんです。 たとえば、量子が観測されることで状態が決まる、という話。これまで抽象的にしか捉えられなかったものが、著者の語りだと「世界は観測者とともにある」という人間味のある視点で届く。エントロピーの説明も同じで、散らかる部屋や冷めていく珈琲から入っていくので、難しい概念に触れているのに肩に力が入りません。そして、光子箱の思考実験や量子コンピュータの重ね合わせの話など、初心者がつまずくポイントも「わからなくていい部分」と「わかると楽しい部分」を分けて語ってくれるのがありがたいところでした。 結局のところ、この本がくれるのは“物理を全部理解する力”よりも、“自然の背後にある仕組みを味わう入口”。細かい計算が苦手でも、自然の働きに対する驚きだけはちゃんと届くんだな、と読んでいて救われました。 物理にずっと憧れてきたけれど距離を置いてきた人に、とても刺さる一冊です。
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