
ラインマーカーズ ~The Best of Homura Hiroshi~ (小学館文庫)
穂村弘
小学館 / 2022-11-04
この本について
日々の生活がただ流れていくように感じて、「自分の気持ちをつかまえる言葉」がどこか行方不明になることってありますよね。大事なはずなのに言語化できない違和感とか、理由の説明がつかない胸のざわつきみたいなものに、うまく手を伸ばせないまま一日が終わってしまう。僕もよくそうなります。 穂村弘さんの『ラインマーカーズ』は、そんな時にふっと視点を変えてくれる一冊です。たとえば「芸をしない熊にもあげる角砂糖」みたいな、説明できないのに胸のどこかをつつく光景や、「さかさまに電池を入れられた汽車みたいにおとなしい」という比喩の妙な温度感。意味を求めて読むというより、言葉に触れた時に自分の感情の輪郭が浮き上がる感じがあるんです。意図を完全に理解しようとしなくていいぶん、逆に自分の中の沈黙していた部分が反応してくれる。 もうひとつ、この本の面白いところは「とりかえしのつかないことがしたいね」とか「鹿です」なんて、といった突拍子もないフレーズが、不思議と日常の感情とつながってくるところ。言えないまま飲みこんできた衝動や、理由のないさみしさが、少し呼吸しやすくなるんですよね。 言葉の意味よりも「なぜか刺さる感覚」を大事にしたい人には、とても相性がいいと思います。
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